与那国奇譚 竹聯幇

「竹聯幇(ジュリェンパン)は台湾の暴力団組織です。今から40数年前に台北近郊で組織されたヤクザ集団ですが、30数年前に四海幇(スーハイパン)と言うそれまで台湾最大のヤクザが解散されてから急速に勢力を拡大して今は台湾最大のヤクザになりました。構成員は10万人ともいわれています。それは張安楽と言うアメリカのスタンフォード大学に留学したと言う男が活躍したからだと言われていますが、事件を起こして今は上海に逃亡しているらしいのですが、どうも、中国の秘密結社との関係は深いようで、竹聯幇イコール大陸のスパイなんて話もあります。聖媧教の火事は、どうも四海幇の残党が仕掛けたのではないかと噂されていますが、まだ犯人は見つかっていません」
「ほーっ、それで聖媧教と竹聯幇はどう言う関係なのです?」
「教祖の葉瑞蘭が一体どこから来たのか不明なのです」
「私が聞いた話では、本名は如蘭。もともと中国共産党の超能力研究所の出身者で、日本に長く滞在した後、台湾に移住したとのことです」
「やはり、そうか! 共産党のスパイの一人か・・・実は、聖媧教の研修所が怪しいと、台湾の公安関係者たちが探索中なのです」
「へえ~、どうしてですか?」
「表向きは信者の研修所なのですが、女性信者だけではないのです。女装の男たちの武術訓練の場でもあるそうです」
「女装の男?」
「それもどこから来たのかわからない一見、女みたいな男たち・・・大陸から送り込まれたと私は見ています」
「何か途轍もない陰謀を企んでいるのですかね?」
「将来、何かを起こそうとしていることだけは間違いない・・・」
「実は、私の会社の部下だった男も会社を辞めて今は研修所にいるのです。それに、沖縄の那覇のホストクラブの男たちも数人・・・」
「そうですか。やはり噂は本当みたいですね」
「龍の玉、そして花束」
「何ですか、それは?」
「一見、平和な革命」
「平和な革命?」
「中国共産党の台湾、沖縄、そして日本占領計画」
「そんなことありえるんですかね?」
「50年計画だそうです。2045年までに中国は龍になる。尾っぽはカザフスタンやウズベキスタンで、鼻は南北朝鮮、玉は台湾で花束は日本と沖縄。そして龍の爪はベトナム。彼らの計画では2020年までにはアメリカと同等の経済大国になるそうです。今のオンボロ・ミサイル技術ではとても考えられませんが、毎年10%近い経済成長率を維持できれば、倍々ゲームで近い将来、日本を抜き去ることでしょう・・・」
―陳が話していたのと同じだ。奴も中国のスパイ?
「とにかくお話はわかりました。で、私は何をしたらいいのですか?」
「こちらの信用調査の会社、それも信用できる会社を調べて紹介してください。それと、聖媧教の研修所のことをもっと知りたいのです。また、池住と言う私の元部下が今、どうしているかも」
「了解。さっそく調査を開始します」
「じゃ、これは当座の調査費です。もしもっと必要だったら遠慮なく請求してください」
「了解しました。それでは!」

 藤田は台湾や中国の黒社会のことが気になってホテル近くに最近オープンした大型書店に行き、関連する本を何冊か購入した。
 そこでわかってきたのは、中国共産党や台湾の国民党と、幇会(秘密結社)の密接な協力関係だった。特に蒋介石と上海の秘密結社の関係は有名だが、共産党も建国の有力者たちがそれぞれの幇会と密接な関係を維持していたことである。
 そしてそれらの幇会は皆、宗教と密接に絡み合うばかりでなく、同祖会と言って、同じ祖先を持つ人々の集まりも幇会と同じように血の団結を有する組織であるということもわかって来た。
―同祖会か・・・葉はひょっとして葉剣英の親戚?
 葉剣英とは中華人民共和国建国の英雄の一人で、人民軍の元帥だった人物である。そうであるとすれば、何かを言い含められて日本、台湾と何かしらの秘密工作に従事していたことは間違いない。
―偉大なる大昔からの中国文明を喧伝する新興宗教は実は暴力団とも密接な陰謀団で、台湾から沖縄、日本をひっくり返す準備をしているのか?

(*藤田がこんなことを考えていてから9年後の2015年、中華統一促進党の張安楽代表が、中華民族琉球特別自治区準備委員会の肩書で沖縄を訪問し、沖縄独立を画策する人々や、旭琉会と言う沖縄の暴力団と会合し、将来構想を話し合ったことが沖縄では大々的に報道されたが・・・日本の主要メディアはまったく報道していない)
ーとにかく今は、趙の報告を待たなければ・・・。

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